2022年8月23日 読売新聞に掲載されました。

微生物 採取率10倍に

目に見えない微量の微生物を掻き取って採取するキット「バイオスワブ(綿棒)」を開発、販売する。

採取率は従来品より10倍近く高い。

 開発したのは後藤仁社長(67)。以前は精密機器の工場などにある「クリーンルーム」で使う資材の

販売や部材の洗浄を行う企業で役員を務めていたが、60歳で退いた。「ものづくりが好きで、退職後は

自分の好きな商品開発をしたいと思っていた」と、2016年に今の会社を起こした。

 既存の安価なスワブは、拭き取り部分が再生繊維で作られていることが多い。柔らかい反面、先を

引っ張ると繊維が抜けたり、採取物を薬液に移す際に正しく測定できなかったりするディメリットがあった。

 こうした課題を解決するものが作れないかーー。考え出したのが、従来の拭き取り式ではなく、

「掻き取り式」だった。先端部分にプラスチック製のマイクロファイバーを用い、固く扁平なへら型にした。

軸の部分も板状でしなることによって、負荷ををかけても折れない構造にし、採取率を大幅に引き上げた。

 微生物などの解析方法や装置に関する技術研究は盛んに進められてきた。一方で、採取自体の効率性に

ついては、ほとんど検討されていない。後藤さんは「ニッチな分野だからこそ、小さな新興企業でも戦える。

付加価値の高い商品を届けたい」と話す。

 「バイオスワブ」は、安価なものと比べると価格は約10倍。当初は医薬業界での活用を想定していたが、

後藤さんは「意外なところからニーズがあり驚いている」という。

 大学の研究室から「マウスを使った臨床研究に」と注文があったほか、動物の病気感染を防ぐための検査

キットに活用できないかと、相談が寄せられたこともある。後藤さんは「鳥インフルエンザの早期発見にも

活用できれば」と期待する。

 スワブは使い捨てだが、今後は素材に生分解性プラスチックを多く使用するなど、環境に優しい商品にする

ことも検討している。 (徳島支局 坂下結子)

【概要】

2016年4月設立のベンチャー企業。微生物採取器具の開発、販売を行う。発明協会が実施する昨年度の四国

地方発明表彰で「中小企業長官賞」を受賞した。アクティブでクリエイティブな会社を目指す。資本金980万円。